改正宅地建物取引業法が4月1日より施行され、既存住宅(中古住宅)にかかる『建物状況調査の種目』が追加されました。
建物状況調査の説明等を義務付け、宅地建物取引業者が関わる内容等提示されました。
そこで今回は、国土交通省の『ガイドライン』や『宅地建物取引業法に関するQ&A』等に基づき、改正後の媒介業務の流れと注意点をまとめてみました。※公益社団法人 全国宅地建物取引業協会連合会より抜粋
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宅地建物取引業者に対して新たに義務付けられました。
①既存建物の売買または交換の媒介契約締結時に、 建物状況調査(インスペクション)を実施する者の斡旋に関する事項を 記載した書面を依頼者へ交付しなければなりません。
②既存建物に関する重要事項として下記の事項を説明しなければなりません。
A 建物状況調査(実施後1年を経過していないものに限る)を実施しているかどうか、実施している場合にはその結果の概要。
B 設計図書・点検記録その他、建物の建築及び維持保全の状況に関する書類で、国土交通省令で定めるものの保存状況。
③既存建物の売買または交換の契約成立時に、建物の構造耐力上主要な部分等の状況について、当事者の双方が確認した事項を記載した書面を交付しなければなりません。
①-1 斡旋に関する事項を記載した書面
建物状況調査の実施者(既存住宅状況調査技術者)に関する情報の提供や見積書の取得など、調査実施に向けた具体的なやり取りが行えるように手配をする必要があります。※売主または購入希望者は、斡旋を受けた場合でも調査費用などについて詳しい説明を受けた上で調査を実施するかどうか決める事になります。
建物が築10年以内の場合には、新築時の住宅瑕疵担保責任保険の期間内である場合でも住宅瑕疵担保責任保険上の住宅取得者を変更できるかどうかにかかわらず、媒介依頼者へ建物状況調査を実施する者の斡旋を希望するかどうか確認しなければなりません。
②-1 建物状況調査を実施しているかどうか
建物状況調査は、既存住宅状況調査技術者講習を修了した建築士が、国が定めた既存住宅状況調査方法基準に従って行うものです。
この調査を行うことで、調査時点における住宅の状況を把握したうえで、売買等の取引を行うことができ、取引後のトラブル発生を抑制することが期待できます。また、調査結果は購入後のリフォームやメンテナンスを行う際の参考にもなります。
②-2 国土交通省令で定める書類等の保存状況
1.建築基準法に規定する確認申請書・確認済証および検査済証
新築時のものに加えて、新築時以外(増改築等)の確認申請書・確認済証または検査済証がある場合には、それらの書類の有無も確認。※確認済証または検査済証を紛失している場合や検査済証の交付を受けていない場合
1-1 | 売主等が確認済証または検査済証を紛失している場合、 |
建築基準法の特定行政庁の台帳に記載されている旨を証明する書類
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1-2 | 査済証の交付を受けていない場合、検査済証のない建築物に係る |
指定確認検査機関等を活用した建築基準法適合状況調査のための
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2 | 建物状況調査 |
建物状況調査の対象となる建物は、既存の住宅で具体的には戸建住宅や
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※事務所や店舗は調査の対象にはなりません。
③ 建物の構造耐力上主要な部分等
建物状況調査の対象部位検査の対象部位は、建物の構造耐力上主要な部分及び雨水の侵入を防止する部分となります。
【例】木造在来軸組工法の戸建ての場合
構造耐力上主要な部分とは、基礎 土台 床板 柱 横架材 壁 斜材 屋根版 小屋組 が該当します。
雨水の侵入を防止する部分とは、外壁 開口部 屋根 が該当します。
※『建物状況調査』は、瑕疵の有無を判定するものではなく瑕疵がないことを保証するものではありません。
建物状況調査方法と結果
1、調査方法
瑕疵保険の検査基準と同等のものである、既存住宅状況調査方法基準に従い、目視を中心としつつ、一般的に普及している計測機器を使用した計測や、 触診・打診等による確認・作動確認等の非破壊による検査を実施。
2、調査結果
建物状況調査をすると、調査を実施した者により作成された『建物状況調査の結果の概要(重要事項説明用)』と『建物状況調査報告書』が依頼者へ交付されます。
※瑕疵保険の検査について
瑕疵保険へ加入するには、住宅瑕疵担保責任保険法人の登録検査事業者による現場検査が必要となります。検査項目は重複していますが、保険の現場検査では、建物状況調査で調査できなかった部位がある場合、再度当該部位について調査が必要になります。また、検査の結果、劣化事象等があると診断された場合には、その部位を修復した上で再度検査を行い、劣化事象等がないことが確認される必要があります。
媒介契約を締結するとき
媒介契約書に、『建物状況調査を実施する者の斡旋の有無』について記載。
重要事項説明書を説明するとき
既存建物の取引の安全確保の観点から、取引を行おうとする購入希望者または賃貸希望者に対して、『建物状況調査の実施及び結果の概要』と、購入希望者に対して『建物の建築・維持保全の状況に関する書類の保存状況』を重要事項として説明しなければなりません。
売買契約を締結するとき
契約成立後のトラブルを防止するため、売買等の契約の成立時に、建物の構造耐力上主要な部分等の状況について、『当事者の双方が確認した事項』を記載した書面を交付しなければなりません。
まとめ
いかがでしたか。宅地建物取引業法が改正され、既存建物の流通促進を図るための市場環境を整備するとともに、消費者が安心して既存建物の売買等を行えるよう『建物状況調査』に関連する部分について改正されました。※今後、法令改正等により変更される可能性があります。
『建物状況調査』を実施する事で売主は物件の現況を客観的に判断する事が出来るようになり、また、売主として何より大きな不安材料の「売却後のトラブルが軽減」されます。買主も、「購入に対しての不安材料を軽減」する事が出来るようになり、リフォーム又はリノベーションを行う際に必要な費用などが予め把握しやすくなります。
ここで、注意すべきなのは『建物状況調査』が義務化されたわけではなく上にも書きましたが、説明及び書面交付の義務化です。必ずしも、『建物状況調査』を行わなければいけないのではなく売主の都合(調査にかかる費用負担等)により『建物状況調査』が行われないことは十分にあり得ます。『建物状況調査』を行わない物件が
問題があるというわけではないのですが中古物件を購入する場合は、十分に検討をしてからにしましょう。